和食器の世界には、自然から着想を得た美しい器形が数多く存在します。その中でも、どこか品格があり、柔らかな印象を与えるのが「木瓜形(もっこうがた)」です。

■ 木瓜とは何か?
「木瓜(もっこう)」という言葉には、いくつかの意味がありますが、元は植物の「木瓜(ぼけ)」に由来すると言われています。この木瓜の実を輪切りにしたときの断面が、四隅がやわらかく窪んだ独特の形をしており、それを意匠に取り入れたものが「木瓜形」です。
形状としては、基本的に楕円形をベースに、四方が緩やかに内側へ凹んでいるのが特徴。中心に向かって引き締まるような、流れる曲線が上品で、まるで花のような、あるいは雲のような穏やかさを感じさせてくれます。
■ 意匠としての「木瓜形」の意味
木瓜形は、古くは武家の家紋にも多く用いられていました。たとえば「木瓜紋」は、日本五大家紋の一つに数えられ、織田信長の家紋としても有名です。これは、木瓜が「子孫繁栄」「家運隆盛」の象徴とされていたことに関係しています。
また、器形にこの形を取り入れることで、食卓に品とめでたさを添えるともされ、祝いの席でもよく用いられてきました。
■ 木瓜形の器──使いやすさと美の両立
木瓜形の器は、見た目の美しさだけでなく、機能性にも優れています。四隅が窪んでいることで、手に馴染みやすく、また料理の盛り付けに自然な区切りが生まれるため、和え物、煮物、前菜など、さまざまな料理を美しく引き立ててくれます。
楕円の器よりも少し変化がありながら、角が取れて柔らかいため、他の器との組み合わせも難しくありません。たとえば、染付の丸皿と合わせればすっきりとまとまり、赤絵や土ものと組み合わせれば和やかな温かみが生まれます。
■ 食卓に小さな物語を添えて
木瓜形の器は、そのやさしい曲線がどこか人懐こく、古来より人々に親しまれてきました。家族の健康や幸せを願いながら、木瓜形の器に料理を盛りつける…それは器を通じて、私たちの暮らしに「心」を宿す行為とも言えるでしょう。
四季折々の素材を、木瓜形の小鉢や向付に。ちょっとした一品でも、器の形ひとつで、ぐっと風情が変わります。使うたびに、古の意匠に込められた祈りや美意識に、そっと触れるような気持ちになるかもしれません。






