■ 赤絵とは?
「赤絵(あかえ)」は、素焼きや施釉焼成された器の上に、赤を中心とした顔料で絵付けを施す技法で、日本の色絵磁器の代表的な様式のひとつです。一般的には「赤絵=赤色の絵付け」と認識されがちですが、実際には赤を基調にしながら、金や緑、黄、紫などを併用して、極めて装飾的かつ華やかな意匠を描くのが特徴です。
日本では17世紀初頭、有田焼(伊万里焼)で中国・景徳鎮の「赤絵」技法を取り入れたことから始まり、のちに京焼、九谷焼、美濃焼など各地に広がって独自の発展を遂げました。
■ 赤絵の技法と工程
赤絵の絵付けは、磁器や陶器の本焼き(高温焼成)を終えたあとに行われる「上絵付け(うわえつけ)」の一種です。工程は以下のような順序になります。
素地の成形・本焼き
まずは器を成形し、透明釉などをかけて高温(約1300℃)で本焼きします。
上絵付け
焼成後の器に、酸化鉄を主成分とする赤い絵具(辰砂・ベンガラなど)で文様を描きます。細い筆を用い、繊細で緻密な線描が行われることが多いです。併せて緑・黄・紫・青・金などの色も使われ、豊かな表情を加えます。
上絵焼成(本焼きより低温)
上絵付けを施した器は、約800℃前後で再び焼成され、絵具が器に定着します。赤色は高温に弱いため、この低温焼成で発色を保ちます。
■ 赤絵の特徴
・華やかで祝祭的な色彩
赤絵は祝いや吉祥を意味する場面にふさわしいとされ、贈答品や正月・節句の食器などにも多く用いられます。赤と金を中心とした色合いが、場の雰囲気を格調高く演出します。
・繊細な筆致と装飾性
細密な模様がびっしりと描かれることが多く、器面を余白なく彩る様式が特徴的です。植物文や唐草、鳳凰、人物、幾何文様など、古来の吉祥モチーフが多用されます。
・地域ごとの表現の違い
たとえば京焼では上品で雅な色彩が重視され、九谷焼では色絵と組み合わされた「赤絵細描」による大胆な構成が多く見られます。有田の赤絵は磁器の白地を生かしたバランス感が特徴です。
■ 代表的な赤絵の様式と器
・古伊万里赤絵
17世紀の有田焼における代表的な赤絵。中国風の図柄をもとに、日本独自の意匠に発展。濃密で優雅な雰囲気があります。
・京焼・色絵赤絵細描
赤を中心としながら、極細の筆致で幾何学的な装飾を敷き詰めるように描く技法。例えば高野昭阿弥のぐい呑みなどに見られる赤絵の典型です。
・九谷焼・赤絵細描
「飯田屋」などの系統で知られる。細密な線描で埋め尽くすような意匠が特徴で、圧倒的な装飾密度を誇ります。
■ 赤絵の魅力とは?
赤絵の器は、単なる道具としての器ではなく、”飾っても美しい、使っても華やぐ”という二重の美を持ちます。日々の食卓に彩りと物語を添え、見る人の心に残る存在感があります。祝いの席やおもてなしの場に使えば、器そのものが語り手となって、その場に意味と華を添えるでしょう。
■ まとめ
赤絵は日本の和食器文化において、「色を楽しむ」「物語を感じる」「美を味わう」ことを可能にする特別な存在です。長い歴史の中で多様に展開してきたその表現は、現代においても器好きの心を魅了し続けています。日常の中に赤絵の器を取り入れることは、まさに日本の美意識を食卓で味わうことと言えるでしょう。







