◆ぐい呑みとは?
ぐい呑みは、日本酒を楽しむための小ぶりな酒器です。その名の通り、「ぐいっ」と飲むのにちょうどよいサイズで、盃よりも深く、猪口よりも趣があり、手の中に収まる器の中でも特に“愛でる”楽しさを持っています。
使い勝手や実用性を超えて、ぐい呑みは工芸としての魅力が凝縮された器。焼き物の技法・絵付け・造形美の粋が込められた逸品が多く、自分の手に馴染む一点を探すのもまた、日本酒を味わう楽しみの一つです。
とりわけ和食器の世界では、ぐい呑みは「器の小宇宙」とも言える存在。掌の上で四季を味わい、窯元の心意気に触れられる贅沢な時間を生み出します。
◆京焼・清水焼のぐい呑み ── 雅の極み、高野昭阿弥の世界
1)朱塗松竹梅 ぐい呑 ─ 吉祥を手の中に


このぐい呑みは、朱塗りの地に「松・竹・梅」「唐草」といった吉祥文様が細密に描かれた華やかで縁起のよい逸品です。
松竹梅は日本において長寿や繁栄を象徴する伝統文様であり、唐草は永遠の命や家運隆盛を表す古典柄。その組み合わせはまさに慶びの象徴であり、祝いの席や晴れやかな宴にふさわしい器といえるでしょう。
高野昭阿弥らしい繊細な筆致と朱の発色の美しさが融合し、掌の中に華やぎを添えます。
2)色絵木瓜山水ぐい呑 ─ 吉祥が詰まった九角の景色


こちらは、赤を基調とした祥瑞文様を地に、木瓜(もっこう)形の窓内に山水画が一筆一筆、手描きで描かれた豪奢かつ繊細なぐい呑みです。
祥瑞とは古来、中国・明代の磁器に見られるめでたい紋様の総称で、日本では江戸初期に大変珍重されました。器全面に描き詰められたその模様は、見た目にも華やかでありながらも、どこか静かな品格を湛えています。
また、木瓜形の窓は子孫繁栄を意味し、その中に描かれた山水の風景は、自然との調和や精神的豊かさを象徴。さらに、九角形という珍しい造形が加わることで、視覚的な面白さと卓上のアクセントを兼ね備えた特別なうつわに仕上がっています。
◆ぐい呑みの愉しみ方──使う、眺める、語らう
これらの京焼のぐい呑みは、ただ日本酒を飲むだけの器ではありません。日常の一杯を特別な時間へと昇華させ、器を通して作り手の美意識や文化的背景に触れることができます。
手の中で器を回し、角度によって変わる表情を楽しみながら、ゆるやかに盃を傾けるひととき。その瞬間こそ、和食器の「ぐい呑み」がもたらす、静かな贅沢です。
さあ、あなたならどのぐい呑みを手に取りますか?






