京の都、千年の雅が息づく場所で生まれ育まれた「京焼(きょうやき)」は、和食器の中でもひときわ絵画性に富み、気品と華やぎをまとった存在です。その洗練された意匠には、かつて京都に皇居があったことによる「みやび」の文化が深く反映されています。
■ 京焼とは?
「京焼・清水焼(きょうやき・きよみずやき)」とも呼ばれるこの焼き物は、京都を中心に作られる陶磁器の総称です。明確な産地の境界を持たず、桃山時代以降、京の都に集まった名工たちによって自由な発想と多彩な技術で創られてきました。
そのため、京焼は決まった型にはまらない個性豊かな焼き物として知られ、色絵・染付・金襴手・青磁・白磁・楽焼など、実に多様な技法が同居しています。
■ 絵画性の豊かさ──色絵の魅力
京焼の真骨頂ともいえるのが、まるで日本画のように細密で美しい「色絵」の世界です。色とりどりの絵の具を用いて、花鳥風月や季節の情景、吉祥文様などが繊細に描かれています。特に「仁清(にんせい)」「乾山(けんざん)」「頴川(えいせん)」「木米(もくべい)」といった名工たちは、京焼の色絵磁器を芸術の域へと押し上げました。
その系譜を受け継ぐ現代の作家たちもまた、伝統を踏まえつつ、現代的な感性を加えた作品を世に送り出しています。
■ 京染付──藍の世界の静けさと品格
もう一つの魅力が、手の込んだ「京染付(きょうそめつけ)」です。呉須(ごす)と呼ばれる藍色の絵具で描かれる文様は、濃淡の妙や線描の細やかさにおいて他の染付とは一線を画します。写実的な草花や人物、風景、詩文などが筆致鮮やかに描かれ、藍の発色の美しさとあいまって、静謐かつ知的な趣を漂わせます。
京焼のひとつの祥瑞染付では、吉祥文様(菱文・七宝文・雷文など)を複数パネルで分割して配置する「割絵文(わりえもん)」という構成が用いられます。まるで屏風や掛軸のような趣きがあり、空間性の高いデザインです。呉須の発色が紫がかった深藍色になるよう工夫され、青の中に豊かな階調と気品が感じられます。鉄分の少ない磁胎(土)と細やかな釉調整により、透明感と軽やかさが際立ちます。
そして、木米(もくべい)は、江戸後期の京焼の巨匠。中国陶磁の研究に熱心で、景徳鎮の染付や赤絵を徹底的に模倣しながら独自の世界を築きました。木米の染付は、山水・人物・楼閣・漢詩文などの「文人趣味」の画題が多く、まるで中国画を磁器に写したような雰囲気。筆遣いは非常に細密で、筆勢にメリハリがありながら、全体は静謐。墨絵のような調子で描かれます。
■ 京焼が映す京の粋
京焼の器を手に取ると、どこか京都らしい気品と遊び心を感じることがあります。控えめながら華やかで、慎ましさの中に洗練された美が宿る──それは千年の都に育まれた美意識そのものです。
また、茶道や懐石、京料理との親和性も高く、料理を引き立てる舞台としての器としての役割も見逃せません。器が料理を引き立て、料理が器の美を際立たせる。そんな絶妙なバランスが、京焼の魅力をさらに深めています。
現代の京焼・清水焼の世界で確かな実績と人気を持つ作家・窯元がたくさんいらっしゃいます。例えば、高野昭阿弥家当主、矢野正三氏(碧黄石窯)、陶あん窯、河井亮輝氏(河井工房)、潮 桂子氏、山口有加氏、西岡義弘氏など・・専門性の高い陶芸家や、一般的な知名度という意味では、テレビや百貨店で紹介されるメディア性の高い作家さんまで、はんなりした京焼を楽しむことができます。
■ 暮らしに雅を添える京焼
和食器の中でも、絵画性と気品を兼ね備えた京焼は、まさに“用の美”と“観る美”を両立させた器です。毎日の食卓にさりげなく取り入れるだけで、そこに一輪の華が咲いたような豊かさを感じさせてくれます。
美しく、静かで、どこか知的。京焼は、暮らしに京の雅(みやび)を添えてくれる、そんな器たちです。









