和食器に描かれる吉祥文様
「宝尽くし」とは、さまざまな吉祥の宝物を一面に散りばめた、非常におめでたい文様です。室町時代から続くこの文様は、江戸時代に庶民文化の中でさらに広まり、婚礼や晴れの席などの衣装や調度品、そして和食器にも多く使われてきました。
文様の意味
宝尽くしは、名前のとおり「宝物を尽くした」図案で構成されており、それぞれのモチーフには幸運や繁栄、学問や商売繁盛を願う意味が込められています。
主なモチーフには以下のようなものがあります:
- 打出の小槌(うちでのこづち):振れば何でも望みが叶うとされる宝の槌。富や願いの成就の象徴。
- 隠れ蓑・隠れ笠(かくれみの・かくれがさ):身に着ければ姿を隠すことができるとされ、災いからの守護を意味します。
- 金嚢(きんのう):財宝を詰めた袋で、金運の象徴。
- 宝巻(ほうかん):巻物の形で、学問や知恵の象徴。
- 丁子・宝珠・七宝・珊瑚:異国渡来の貴重な香辛料や宝石。香り、気品、永遠の価値などの意味をもちます。
- 蓬莱山(ほうらいさん):仙人が住むとされる不老不死の山。長寿の象徴。
これらの宝物は、ひとつひとつが縁起物として尊ばれており、それらを組み合わせることで「福の総取り」を願う文様となっています。
宝尽くしの物語
この文様には、古代中国から伝来した「八宝」思想や、日本の「七福神信仰」、さらには密教の「三昧耶形(さんまやぎょう)」など、複数の文化的背景が重なっています。
たとえば、「打出の小槌」は大黒天の持ち物であり、七福神のひとり大黒様の福徳を象徴します。蓬莱山は不老不死の理想郷であり、隠れ蓑や隠れ笠は忍者の伝説とも結びつき、人智を超えた力へのあこがれを表します。
このように、宝尽くしは単なる縁起物の寄せ集めではなく、人々の願いや祈り、そして古来の知恵が編み込まれた、深い文化的意味をもった文様なのです。
和食器に描かれた宝尽くし
和食器においては、特に祝いの席で使われる皿や盃、重箱、飯椀などに宝尽くしが描かれることが多くあります。染付(そめつけ)や赤絵(あかえ)で精緻に描かれる宝物は、料理を引き立てながらも、使う人に福を呼び込む意匠として親しまれています。
また、現代の作家ものの器や陶芸作品でも、伝統を受け継ぎながら新たなアレンジが加えられた宝尽くし文様を見ることができます。抽象化された宝物がモダンな食卓にも調和し、古典の美を現代に伝える存在となっています。
まとめ
宝尽くし文様は、ただ華やかなだけでなく、そこに込められた数々の「願い」が、使う人の心にそっと寄り添う文様です。祝いの席や特別な贈り物の器にふさわしい、まさに「縁起尽くし」の意匠。和の文化を今に伝える象徴として、これからも食卓のなかで輝き続けることでしょう。







