和食器には、自然の美しさを写し取った器形が多くありますが、「菊形(きくがた)」もそのひとつ。日本の国花のひとつであり、古来より高貴な花とされてきた「菊」の花びらを模した形状の器は、優雅で格調高い佇まいが特徴です。
■ 菊形とは?
菊形とは、器の口縁部に細かく刻みを入れ、放射状に広がる花弁のような形状に仕立てたものを指します。通常の丸形とは異なり、繊細で立体的な凹凸があるため、器全体に表情が生まれます。
器の正面から見るとまるで菊の花が咲いているかのようで、上品で華やかな印象を与えます。その形状は、単なる美しさだけでなく、日本の伝統的な「花を愛でる心」に通じています。
■ 歴史と象徴性
菊は、奈良時代から平安時代にかけて中国から渡来し、日本でも貴族や皇室に好まれる花として重用されました。特に天皇家の紋章「十六葉八重表菊」は有名で、菊は「長寿」や「不老不死」の象徴ともされてきました。
こうした背景から、菊形の器には「めでたさ」や「格の高さ」が込められており、祝いの席やおもてなしの場面にもふさわしい器とされています。
■ 菊形の器の種類と用途
菊形は、小皿や取り皿、菓子皿、珍味入れ、鉢、蓋物など、さまざまな形で用いられます。特に、白磁や染付、赤絵などの伝統的な装飾と組み合わさることで、その形状の美しさが際立ちます。
器に盛りつける料理も、繊細な和菓子や、季節の前菜、小鉢料理など、見た目を重視する料理と相性がよく、料理そのものを「花のように演出」してくれる効果もあります。
菊形の器は、ただの装飾的な形ではなく、日本の文化や美意識が詰まった意匠です。花を愛し、季節を尊ぶ日本人の心をそのままかたちにしたような器。それは、手に取るたび、食卓に華やぎとしとやかさをもたらしてくれます。
日常使いにも、特別な日の器にも――菊形の器をそっと添えてみてはいかがでしょうか。






