日本のやきものの歴史をひもとくとき、美濃焼はまさにその中枢に位置します。岐阜県東濃地方を中心に発展した美濃焼は、良質な陶土に恵まれ、時代ごとに多彩な技法と意匠を生み出してきました。そこには、まばゆい黄金、深遠なる黒、やさしき白といった色彩の美があり、それぞれが独自の世界を築いています。



◆ 黄金の器 ― 黄瀬戸の華やぎ
美濃焼で最初に登場したのが黄瀬戸。その名のとおり、柔らかな黄色の地肌が印象的な器です。多くは草花を彫った文様があり、そこへ胆礬(たんぱん)という深緑の釉薬が差し色として施され、まるで黄金に翡翠を散らしたような上品な美しさを放ちます。
釉薬の質感にも違いがあり、つるりとした光沢のある「ぐい呑み手」、ざらりとした質感の「油揚げ手」と、手に取った感触からして楽しめるのも黄瀬戸の魅力です。



◆ 漆黒の美 ― 瀬戸黒から黒織部へ
次に登場したのが、漆黒の艶をもつ瀬戸黒です。焼成の最中、窯から器を引き出して急冷することで、深みある黒を得るこの技法は「引出し黒」とも呼ばれます。なかでも、筒形の茶碗が代表的です。
この黒一色に、ゆがみや変化を加えてさらに個性的にしたのが織部黒。そこから、一部に鉄絵を加えることで余白を活かした黒織部へと発展していきます。漆黒の世界にも、無限の表情があるのです。
◆ やさしき白 ― 志野の深遠なる世界
そして、美濃の焼物史におけるもう一つの金字塔が志野焼です。日本で初めて本格的に白釉を用いたやきものであり、そのやわらかな質感と素朴な美しさは、多くの茶人や器好きに愛されてきました。
白い釉の下には、ほんのりと赤い火色(ひいろ)が現れ、表面には貫入(かんにゅう)や柚肌(ゆずはだ)と呼ばれる自然な変化が生まれます。なかでも鉄絵で文様を描いた「絵志野」は、にじみや濃淡の美しさを楽しめる逸品。その他にも、練込み志野、鼠志野、赤志野など、豊富なバリエーションが存在します。



◆ 緑の意匠 ― 織部の革新性
茶人・古田織部の名を冠する織部焼も、美濃焼の代名詞のひとつです。織部焼にはさまざまな種類がありますが、特に広く知られているのが、緑釉を施した「青織部(総織部)」。器の全面を覆う緑の釉薬は、見た目に鮮やかで、料理の彩りともよく調和します。
一方、器の一部に緑釉をかけ、余白には鉄絵で文様を描いた鳴海織部や絵織部(志野織部)、黒地の織部黒、黒織部、さらには民芸調の風情漂う弥七田織部など、実に多彩な展開があります。大胆かつ革新的な表現が、現代にも新しさをもたらしています。
◆ 名声の陰に ― 美濃伊賀、美濃唐津、御深井
志野や織部の陰に隠れがちですが、美濃焼には他にも個性的な作風があります。たとえば、ざっくりとした土肌に風格ある「美濃伊賀」、九州の唐津焼の影響を受けた「美濃唐津」、尾張藩の御用窯であった「御深井焼(おふけやき)」など。いずれも美濃の土と技に支えられた存在であり、その味わいはじんわりと心に沁みるものです。
◆ 現代美濃焼の広がり
美濃は、日本でも有数の陶土の産地であり、高度な技術力をもつ地域です。そのため、古典の再現から現代的デザインの創造、量産体制にいたるまで、あらゆるニーズに応える守備範囲の広さが特徴となっています。
飲食店向けの業務用食器の供給でも頼りにされており、割れや欠けが出た際にもすぐに同じ器を補充できる対応力から、料理人たちの信頼も厚いのです。
◆ 結びに
「やきもので可ならざるものは無し」とまで言われる美濃焼。その歴史と技術は、まさに日本陶芸の縮図ともいえる存在です。華やぎの黄瀬戸、静謐なる瀬戸黒、やさしき志野、革新の織部――そして、名も知られぬ味わい深き器たち。
日々の食卓に、美濃焼の一皿を加えてみてはいかがでしょうか。器ひとつで、料理も気分も豊かになる――それが美濃焼の魅力なのです。
小鉢 ■ 浜田純理 黄瀬戸 山柿 一つ花 小鉢
黄金色に輝く、シンプルな形の小鉢。
ザックリトした土味に、渋く輝く「山柿紅葉」とも言われる、黄金色をした小鉢です。
しっとりと潤いのある油揚げ肌の様な輝く表面に「花文」を彫り入れ、そこにさりげなく緑色の「タンパン」を加えた古風な鉢です。
焼成時にできた「こげ」の景色は、千利休の「わび・さび」を髣髴させてくれます。
高台周りの「こげ」の景色も見ごたえがあります。


小鉢 ■ 浜田純理 黄瀬戸 山柿 一つ花 小鉢
■サイズ:口径13.0cm 高さ:6.4cm 深さ:5.2cm
■重さ:約280g
■窯元:土岐市/酎磨窯・浜田純理作<陶号・露人>
長方皿 ■ 浜田純理 (陶号・露人) 黒織部
即興的に描いた個性的な黒織部長方皿。
黄瀬戸釉を下地に即興的に黒織部釉を掛け流し描いた幾何文のお皿。 窯変によって予期しない釉色が見られ、景色は大きな樹木の様にも見えます。
四方に反り上げていますので、汁物などには重宝します。底は4つ足を施し、褐色に焼かれた色合いも見逃せません。

長方皿 ■ 浜田純理 (陶号・露人) 黒織部
■サイズ:約19.5cm×13.5cm 高さ約3.5cm
■重さ:約430g
■窯元:土岐市/酎磨窯・浜田純理作
丸皿 ■ 野々村浩司 総 織部 杉文 七寸 皿 (足付き)
緩やかな曲面に、杉文を施した七寸のお皿です。
日本伝統の杉綾文を削って作った、不思議な景色のお皿です。
削りの深みには織部釉が溜まって、山々を上から覗いたような風景にも見えます。地元美濃の土に信楽の土をブレンドし、表面にはつぶつぶの跡を残し、その感触がお菓子のような「サクッ」とした感じのお皿です。


丸皿 ■ 野々村浩司 総 織部 杉文 七寸 皿 (足付き)
■サイズ:口径21.0 深さ1.2cm 高さ2.5cm
■重さ:約680g
■窯元:土岐市駄知/野々村浩司作

