赤坂見附の駅を出て、六本木方面の出口から一歩足を踏み出すと、賑やかな通りの音が耳に入ってくる。左に曲がり、さらに右へ、一ツ木通りをしばらく歩くと、路地にひっそりと佇む古風な家屋が見えてきた。風情のある木の扉をくぐり抜けると、ほのかな照明に包まれた小料理屋の客席が広がっている。
席に着くと、まずは冷酒「鶴齢」を一杯。新潟の雪解け水のように澄んだ冷酒が、グラス越しに小さな波紋を描き、涼やかに喉を潤してくれる。その余韻に浸りつつ、次に頼んだのは揚げ出し豆腐。やがて小鉢に盛られて運ばれてきたそれは、13cmほどの赤絵の器。落ち着いた赤の文様が器全体を彩り、網目模様の染付が大胆に囲んでいる。どこか温かみがありながらも、凛とした存在感を放っているその小鉢に、思わず目を奪われた。


口に運ぶと、衣のサクサク感と豆腐の柔らかさが絡み合い、日本酒との相性も抜群だ。しみじみと味わいながら、ふと器に目を落とすと、華やかなのに落ち着いた赤絵の模様が、一層の贅沢さを感じさせてくれる。
この器に盛られた料理と共に過ごすひとときは、ただの食事とは違う。忙しい日常から少しだけ解放され、心の底から満たされる、そんな至極のひとときだ。いい器だ。
花網玉割・土山敬司《小鉢・13.0cm》



花網玉割・土山敬司《小鉢・13.0cm》
おおよそ直径13.0 × 高さ4.8cm

