有田焼。それは日本陶磁器の誇りであり、美意識の結晶である。その中でも、古伊万里の風情を継ぐ源右衛門窯の作品は、どこか懐かしくも新しい息吹を感じさせる。一つの器がもつ世界観を、まるで詩のように語りかけてくるのだ。
源右衛門窯の「染付市松紋麺鉢」は、その名の通り、伝統的な市松文様を染付で描いた逸品である。市松模様──それは江戸の風雅、歌舞伎役者・佐野市松の名に由来する文様であり、規則的な格子が織りなすリズムが、見る者の心に落ち着きと品位を与える。青と白のコントラストが清らかで、どこか涼やかな風を感じさせる。


染付の藍は、有田焼特有の深みがある。焼き上がり直後の鮮烈な青も美しいが、使い込むほどに微妙な色合いが変化し、器そのものが時間を刻んでいく。その叙情性は、有田焼ならではの魅力であり、使い手の生活にそっと寄り添う。
源右衛門窯は、古伊万里の心を今に伝える窯元だ。古伊万里の美とは何かと問われれば、それは華やかさと品格が織りなす絶妙なバランスであると言えるだろう。手間暇を惜しまず、一点一点が職人の技と感性で仕上げられるその作品には、過ぎ去りし時代の温もりと、現代の生活に溶け込む洗練が同居している。
この麺鉢の魅力は、その「一器多用」の実用性にもある。たっぷりとした深さと広がりは、うどんや蕎麦といった温かな麺料理にもぴったりだ。冷たい麺を盛れば、白磁と藍が一層際立ち、涼感を引き立てる。また、煮物やサラダを盛り付けても様になる懐の深さを持ち、料理を引き立てる器としての完成度の高さが伺える。

この器が食卓にある風景を想像してほしい。料理を盛り付け、家族や友人と囲む時間。それは、器が単なる道具ではなく、思い出の一部となる瞬間だ。「染付市松紋麺鉢」は、そんな日々を静かに彩り、日常に小さな贅沢をもたらしてくれる。
時を経ても色褪せることのない伝統と、現代の感性が見事に交差する源右衛門窯の一品。この麺鉢に触れ、使うたびに、藍の深まりを感じながら、古伊万里の心と対話するひとときを楽しんでほしい。
【有田焼】【源右衛門窯】 染付市松紋麺鉢

【有田焼】【源右衛門窯】 染付市松紋麺鉢
サイズ 直径 約15.5cm 高さ 約7.5cm


