和食器の文様「捻文(ねじもん)」
― ねじれの中に生まれる動きと雅 ―
■ 捻文とは何か?
「捻文(ねじもん)」は、器の装飾として用いられる文様の一種で、ねじる、絡む、よじれるといった動きを意匠化したものです。植物の蔓(つる)が風に舞うように絡まりながら伸びる様子や、布を絞った時にできる撚り(より)の流れを抽象化した図案が多く見られます。
単なる幾何学模様ではなく、自然の動きを取り込んだ動感ある文様として、古くから日本の陶磁器の装飾に使われてきました。特に染付では、筆の運びによって「捻る」という動作そのものが筆跡に反映され、リズミカルで生き生きとした線が表現されます。
■ 捻文の意味と物語
捻文は、「ねじれ」や「回転」を視覚的に取り入れることで、動き・躍動・循環を象徴します。これは自然界の摂理、たとえば水の渦、風の流れ、命のつながりといったイメージとも重なります。
また、日本の工芸文化において「ねじる」「撚る」という行為は、縁を結ぶ・運を絡めるといった吉祥的な意味合いも含みます。帯の結び目、絞り染め、組紐など、生活文化の中でも“ねじる”という動作は重要な美の一形態とされてきました。
つまり捻文は、見た目の躍動感だけでなく、福を引き寄せる象徴としての側面もある文様なのです。
■ 福泉窯の染付捻り文 ― 伝統に遊び心を添えて
有田焼の名門・福泉窯(ふくせんがま)は、染付技法を中心に、伝統と創意を融合させた器作りで知られています。なかでも「染付絵変り捻り紋 新長角皿」や「染付変り絵捻り紋 楕円深鉢」は、捻文の現代的な再解釈といえる作品です。
これらの器に共通する特徴は次のとおりです:
捻りの形が器そのものに反映されている:角皿や深鉢といったフォルム自体に微妙なカーブや非対称性があり、「ねじれ」を視覚的にも触感的にも感じ取れます。
文様が器ごとに異なる(絵変り):各器にはそれぞれ異なる捻文が描かれており、「同じ形、異なる物語」を楽しめます。これは器を選ぶ楽しさを深めてくれます。
筆の勢いを活かした染付:福泉窯独特のやわらかく伸びやかな筆致が、捻文に生命力や遊び心を与えています。
これらの器は、料理を引き立てるのはもちろん、「見る楽しさ」「並べる楽しさ」をもたらす日常の芸術品といえます。
■ おわりに ― 捻文の器で、ひとひねりある食卓を
捻文は、その名の通り「ひねり」が加えられた美のかたちです。それは単に技巧的であるだけでなく、暮らしの中に“動き”と“変化”をもたらす文様でもあります。
福泉窯の作品のように、伝統と現代感覚が美しく融合した器は、見る者・使う者に「美の余白」を与え、日々の食卓に静かで力強いアクセントを添えてくれます。





