■ 市松文様とは
「市松文様(いちまつもんよう)」は、白と黒や、白と緑など異なる色を交互に配した正方形の格子模様で、碁盤のように規則正しく並ぶのが特徴です。現代では「チェック柄」としても認識されるこの文様は、日本の伝統意匠の中でもとりわけシンプルでありながら洗練された美しさを持っています。
一見、単純な図形の繰り返しに見えますが、そこには永遠の連なり、繁栄、調和といった意味が込められています。




■ 市松の名の由来と歴史的背景
この文様が「市松」と呼ばれるようになったのは、江戸時代の歌舞伎役者・佐野川市松(さのがわ いちまつ)に由来します。佐野川市松が舞台衣装としてこの模様を好んで着用したことから、次第に「市松模様」と呼ばれるようになりました。
もともとこの模様は「石畳文」「霰格子(あられごうし)」などとも呼ばれていましたが、市松の人気によって文様そのものが彼の名と結びつき、時代のファッションリーダー的存在として、江戸の人々の間で大流行を巻き起こしました。
■ 和食器に見る市松文様の魅力
市松模様は、和食器においても人気の高い意匠の一つです。白磁に藍で描かれた染付の市松や、釉薬の濃淡を使った表現、また土の色を活かして釉をかけ分ける技法など、焼き物ならではの素材感と融合した市松が数多く見られます。
市松のパターンは、見る者に安心感を与える均整の取れたリズムと、古典的でありながらモダンにも通じる普遍性があります。料理を盛った際にも、食材を引き立てる背景として程よい緊張感を与え、特に和の料理の繊細さや構成美を際立たせる効果があります。
■ 市松文様が語る物語
市松模様は、繰り返す格子が「無限に続く」ことから、「子孫繁栄」「商売繁盛」「家運隆盛」などの吉祥文様とされています。そのため、祝いの器や贈答用の品としても好まれる文様です。
また、現代においては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムに市松模様が使われたことでも記憶に新しく、日本文化の象徴として世界に発信されましたね。そこには、多様性・調和・継続といった現代的な意味も重ねられています。
■ まとめ
「市松文様」は、日本の伝統美と現代感覚が見事に融合した文様です。江戸の粋を象徴するこの模様が、今なお和食器の世界で愛され続けているのは、その簡素にして奥深い構成美と、縁起の良い意味合いによるものでしょう。
日常の器に市松の意匠を見つけたとき、そこに宿る江戸の洒落心と、未来への希望を感じ取ってみてはいかがでしょうか。






