日本人の暮らしには、四季折々の美しさや移ろいゆく情感が深く根ざしています。食事の器もまた、その感性を映し出す舞台の一つ。中でも「向付」は、食卓に彩りを添え、見て楽しいだけでなく、和の心を感じさせる存在です。


向付とは、主にお造りや小鉢に盛る料理を供するための器。形や色、装飾の多彩さが魅力で、料理の個性を引き立てる名脇役でもあります。この器の選び方ひとつで、食卓の雰囲気ががらりと変わるのです。
器の組み合わせ、重ならない美しさ
和の朝食を思い浮かべてみてください。ご飯をよそう茶碗、味噌汁を注ぐ汁椀、焼き魚を載せる中皿、そして向付。これらの器を組み合わせる際に大切なのは、同じ形や大きさが重ならないようにすること。同じ丸い器ばかりが並ぶと単調に見えてしまうため、形や高さの違いを意識すると食卓全体にリズムが生まれます。
「すっきりとした中にも変化をつける」。これは、和食器を楽しむ基本ともいえる心得です。重ならない器の配置が、料理の美しさを一層引き立てるのです。
向付の多彩な表情
向付の魅力は、何といってもその多様性にあります。花の形を模したもの、片口のついたもの、脚付きの華やかなもの、折り上げのデザインがあるもの……色や柄もさまざまで、まさに選ぶ楽しさが広がります。季節を感じさせるデザインを選ぶのもおすすめです。例えば春には桜や若草を模した器、秋には紅葉やすすきをイメージしたものなど、料理とともに四季を楽しむことができます。
「この料理をこんな器に盛ったらどんな風に見えるだろう?」そんな想像を巡らせる時間は、まるで宝探しのよう。料理のために器を選ぶのか、器のために料理を考えるのか――そのどちらでも良いのです。


気軽に楽しむ和食器の遊び心
特別な日だけでなく、日常使いの中で気軽に向付を楽しんでみるのはいかがでしょうか。例えば、汁気のある料理には深めの小鉢、果物やデザートには浅めの小鉢を。お造りだけでなく、軽いおかずを盛るのにも向付は重宝します。
ユーモラスな形や、割山椒と呼ばれる独特のデザインの器は、食卓にアクセントを加え、会話のきっかけにもなります。片口の器は和の趣を漂わせる一方で、洋風ソース入れとしても活躍する万能選手です。大中小と揃えておけば、その使い勝手の良さに驚くはず。
器が紡ぐ日本の情感
器を通して季節を愛でるという日本人の感性は、まさに和食文化の真髄です。向付という名の小さな舞台で繰り広げられる料理と器の競演。その豊かな世界に触れることで、きっと日々の食卓がより楽しく、特別なものになるでしょう。
「器が料理を引き立て、料理が器を輝かせる」。そんな関係をぜひ、もっと気軽に、そして自由に楽しんでみてください。和食器の持つ表情豊かな魅力が、きっとあなたの暮らしを彩る力となるはずです。
吹墨山水 二重菊向付
サイズ 17.3×12.0xH4.6cm
黄濃乾山菊 二重菊向付
サイズ 17.3×12.0xH4.6cm







