京焼に宿る吉祥の文様 ―「祥瑞」の世界

京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史 和食器
京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史

■ 祥瑞とは ― 吉兆を映す藍の宇宙

「祥瑞(しょんずい)」とは、もともと中国・明代末期に景徳鎮で焼かれた磁器に由来する名称です。これらは、主に日本の茶人により「吉祥のしるし=祥瑞」と呼ばれたことに始まります。文様の多くは、七宝、青海波、霊芝雲、宝相華、亀甲、格子など、いずれも縁起の良い柄で構成されており、その集合美の中に「安寧」や「豊かさ」「繁栄」の願いが込められています。

とくに日本では、京焼を中心に独自の意匠解釈が発展し、絵付師の技量を存分に引き出す舞台として受け継がれてきました。藍一色の染付で表現されるその世界は、静かに、けれども力強く、器の中に小宇宙を築きます。

■ 歳寒三友を描く茶碗 ―《三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽》

京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小
京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小
京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小
京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小

   

ひとつめにご紹介するのは、《三友祥瑞ご飯茶碗》(壹楽 作)。この器は、古来より節義を重んじる士人の理想を象徴してきた「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」――すなわち、松・竹・梅――を文様に取り入れています。

三友とは、冬の寒さにも葉を落とさぬ松と竹、そして厳冬の中に花を咲かせる梅。中国の文人思想における「変わらぬ徳」を表す象徴であり、それが京焼の染付に昇華された作品です。

深い彫りを施した地に、濃い呉須の藍で緻密に描かれた松竹梅。器の側面には「捻り祥瑞」の丸文が配され、その中に三友のモチーフが交互に描き込まれています。口縁には瓔珞(ようらく)模様が連なり、仏教的荘厳さも仄かに漂わせます。

全体に漂うのは、まさに京焼ならではの静謐と気品。世代を超え、季節を超えて、日々の食卓に確かな祈りを宿す器といえるでしょう。

■ 細密の極み ―《染付赤祥瑞ぐい呑 貴史》

京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史
京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史
京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史
京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史

   

もう一つの逸品、《染付赤祥瑞ぐい呑》(貴史 作)は、まさに祥瑞文様の粋を極めた作品。器の内も外も、空白を惜しむかのように緻密な文様で埋め尽くされています。

見込みには、捻子祥瑞(ねじししょんずい)と呼ばれる流れるような曲線構成。文様の「とじ目」には七宝文が巧みにあしらわれ、円満と調和の象徴がさりげなく収められています。外面には青海波や細密な格子模様が重なり合い、見るたびに異なる風景が現れるかのようです。

さらに特筆すべきは、高台の裏――通常は省略されがちな部分にまで、祥瑞模様が施されている点。これは単なる「装飾」ではなく、器全体に祝意を巡らせるという思想の現れといえるでしょう。

赤祥瑞の名の通り、藍の中に控えめながら赤を差すことで、全体がいっそう豊かな表情を帯びています。手のひらに収まる小さなぐい呑ながら、そこには祝福と緊張感、そして作家の深い呼吸が宿っています。

■ 祥瑞に込められた願い

祥瑞は、ただの模様ではありません。それは、千年を超えて伝わる吉祥の意匠であり、器を通じて人の営みに「祝い」と「願い」を届ける力を持つ図象です。

京焼において、祥瑞文様がこれほどまでに重用されるのは、古典に立脚しつつも、描き手の「手」が感じられる柔らかさと、精神性の高さが共存しているからでしょう。

描かれるその世界は、決して派手ではないものの、日常の中に静かな凛とした空気をもたらします。飯碗で、あるいは酒器で――手に取るたびに、絵付けの向こうに込められた想いが、そっと心に届くようです。

京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小
京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小

京焼 清水焼 三友祥瑞ご飯茶碗 壹楽 小

寸法 小  直径11.5cm 高さ5cm 重さ120g 化粧箱付

   

   

京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史
京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史

京焼 清水焼 染付赤祥瑞ぐい呑 貴史

寸法 直径6.7cm 高さ5cm 木箱

   

   

和食器のぐい呑み──掌に宿る美と趣