【釉】陶磁器の釉薬 ― 対比と調子を楽しむ

三島7.2寸浅鉢・吉井史郎《大鉢・中皿・22.0cm》 和食器
三島7.2寸浅鉢・吉井史郎《大鉢・中皿・22.0cm》

陶磁器の魅力のひとつに、釉薬(ゆうやく)による豊かな表情があります。
釉薬は器の表面を覆い、色や光沢を与えると同時に、装飾としても重要な役割を果たしてきました。とくに日本のやきものでは、釉薬を使った「色の対比」や「調子の妙」を楽しむ文化が育まれてきました。

有田焼 原重製陶所 瑞峯窯 165菊鉢 (鉄釉 /練白)
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有田焼 原重製陶所 瑞峯窯 165菊鉢 (鉄釉 /練白)

   

複数の釉薬による対比の美

釉薬を使った装飾は、しばしば複数の異なる色を組み合わせ、その対比を楽しむ方法がとられます。
日本の民窯で日常使いの器に用いられてきた基本的な釉薬は、

●褐色の鉄釉(てつゆう)
●白い藁灰釉(わらばいゆう)
●緑釉(りょくゆう)または青釉(せいゆう)
の三種類でした。

これらは、たとえば半分ずつ異なる釉をかけ分ける「片身替り(かたみがわり)」や、部分的に施す方法で、素朴ながらも変化に富んだ景色を生み出してきました。

釉薬を重ねた装飾 ― 複雑な調子

釉薬を重ね掛けし、さらに複雑な表情をつくる技法も発達しました。代表例が蛇蝎釉(だかつゆう)です。
蛇蝎釉は、黒褐色の鉄釉の上に白濁釉を重ねることで、黒い地に白い斑文(まだらもん)がムラムラと浮かび上がる独特の景色をつくります。
この技法は、とくに薩摩焼や唐津焼などで見ることができます。

シャビーターコイズ リンカ小鉢 益子焼
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釉薬による華やかな装飾 ― 三彩と交趾手

釉薬を使った装飾効果をさらに高めたものに、三彩(さんさい)と交趾手(こうちで)があります。

三彩(さんさい)

三彩とは、
・鉄を呈色剤とした黄色・褐色
・銅を呈色剤とした緑色
を基本にした、三色の釉薬で彩られた陶器です。

中国・唐の時代に焼かれた唐三彩に始まり、日本でも奈良時代に奈良三彩として作られました。美濃焼を含む施釉陶器の発展に大きな影響を与えています。

交趾手(こうちで)

交趾手は、中国では「法花(ほっか)」と呼ばれた技法に由来します。
文様部分を土で細く盛り上げ、区画を作り、その内外に異なる色釉を施します。まだ素焼きの生地に釉薬を擦り込むようにして塗り込んでいきます。盛り上がった区画によって釉薬が混ざり合うことなく、色分けがくっきりと映えるのが特徴です。

香蘭社 ルリ竹林文・フリーカップ
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地の土を生かす技法 ― ロウ抜きと指描き

釉薬の装飾は、必ずしも色の対比や重ね掛けだけにとどまりません。
一色の釉を用いながら、地の土を生かして文様を作る技法もあります。

代表的なものがロウ抜きです。
これは、ろうけつ染めと同じ原理で、文様を抜きたい部分にロウを塗り、その上から釉薬をかける技法です。焼成すると、ロウを塗った部分には釉薬がかからず、地の土がそのまま現れ、自然な模様が生まれます。抜いた部分に絵付けを施すこともあります。

また、釉をかけた直後に指や道具でこすって文様を描き出す指描きの技法もあります。
この技法は、とくに益子焼などでよく見られ、素朴な味わいを器に添えています。

釉薬の世界は、色の重なり、対比、地肌との調和といった無限の表現の可能性に満ちています。
日本のやきものは、こうした釉薬の美を生活に取り入れ、日常の中に豊かな景色を描いてきました。
その静かな美しさは、今なお私たちの心を引きつけてやみません。

三島7.2寸浅鉢・吉井史郎《大鉢・中皿・22.0cm》
三島7.2寸浅鉢・吉井史郎《大鉢・中皿・22.0cm》
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現代の和食器に使われる代表的な釉薬

現代の和食器でも、伝統に根ざしながら、それぞれに豊かな表情を持った釉薬が使われています。
よく見られる代表的な釉薬とその焼成後の色・特徴の概要は、以下のようなものがあります。

1)鉄釉(てつゆう)

古くから民窯で多用されてきた釉薬で、焼成後は褐色から黒褐色に発色します。鉄分を多く含むため、深く渋い色合いになり、重厚な風格を器に与えます。酸化焼成によって特に美しい褐色が生まれます。

2)藁灰釉(わらばいゆう)

藁を燃やした灰を原料とする釉薬です。焼成後は白からわずかに黄味がかった白色になり、やわらかく素朴な印象を与えます。土の持つ温かみと相まって、特に益子焼や美濃焼の素朴な器によく使われています。

3)緑釉(りょくゆう)または青釉(せいゆう)

鉄または銅を呈色成分とする釉薬で、緑色から青緑色の透明感のある発色が得られます。みずみずしく爽やかな印象を持ち、瀬戸焼や唐津焼など、幅広い産地で見られる釉薬です。

4)灰釉(かいゆう)

現代で見直されている釉薬のひとつです。木灰を使った釉薬で、焼成後には淡い緑がかった透明色になり、素朴ながらも自然な景色を器に添えます。古信楽などに由来する自然釉の再現としても親しまれています。

5)瀬戸黒(せとぐろ)

黒色の美しい釉薬として知られるのが、瀬戸黒です。漆黒のつややかな表面が特徴で、焼成中に窯から引き出して急冷することで深い黒が得られます。特に茶碗などで重宝され、今も多くの陶工によって作られています。

6)織部釉(おりべゆう)

一方、織部釉は、銅を含む釉薬で、還元焼成によって鮮やかな緑色を生み出します。流れるような釉の模様が美しく、料理を引き立てる個性豊かな和食器として、現代でも高い人気を誇ります。

7)志野釉(しのゆう)

長石を主成分とする釉薬で、焼成後には乳白色、時にわずかにピンクがかった柔らかな白色になります。志野焼に代表されるこの釉薬は、温かみのある器肌と優しい景色が魅力です。

8)青白磁釉(せいはくじゆう)

透明感と上品さをあわせ持つのが、青白磁釉です。焼成後にはほのかに青みを帯びた白色に発色し、すっきりと洗練された印象を与えます。モダンな和食器にもよく使われ、食卓を明るく彩ります。

9)天目釉(てんもくゆう)

また、天目釉は、南宋時代の天目茶碗に由来する釉薬で、黒からこげ茶色に発色します。焼成条件によっては、油滴天目(ゆてきてんもく)のように、星空のような斑点が現れることもあり、重厚で幻想的な趣を持ちます。

以下は、釉薬というより技法かもしれませんが・・、楽しめます。

10)粉引釉(こびきゆう)

素朴な温もりを大切にする現代の和食器では、粉引釉も人気です。これは、器に白い化粧土をかけ、その上から透明釉を施す技法で、焼成後には粉をふいたようなやわらかな白色に仕上がります。唐津焼系や民芸陶器などに多く使われています。

11)貫入釉(かんにゅうゆう)

最後に、貫入釉(かんにゅうゆう)も現代で好まれる釉薬のひとつです。透明釉の表面に細かなひび(貫入)が入り、光や使い込むことによって独特の表情が育っていきます。器を手に取ったときに生まれる「経年の美しさ」が、和食器に深みを与えています。

京焼 清水焼 織部ご飯茶碗 陶化 大
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まとめ

このように、現代でも多くの釉薬が受け継がれ、あるいは再解釈されて使われています。
釉薬一つひとつが、和食器に豊かな表情と味わいをもたらしており、選ぶ楽しみもまた、和食器の大きな魅力のひとつと言えるでしょう。

有田焼 原重製陶所 瑞峯窯 165菊鉢 (鉄釉 /練白)

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【サイズ】φ165×H47mm

   

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おおよそ直径22.0 × 高さ5.5cm

   

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【益子焼】 粗い土肌に、飾らぬ美しさ