唐津焼(からつやき)は、土そのものの息吹を感じさせる「野趣(やしゅ)」が魅力のやきものです。赤くざんぐりした土、白くねっとりとした土、そしてこんがりと狐色に焼き上がった肌合いは、まさに大地の力そのもの。華やかさよりも、素朴で、自然に寄り添った美しさを大切にする唐津焼は、長く茶人たちにも愛されてきました。



唐津焼の原点:無地唐津と絵唐津
もっとも基本的な唐津焼のかたちは「無地唐津」。これは、土灰釉や長石釉をずぶがけして焼き上げた、飾りのないシンプルな器です。しかし、その簡素さのなかに、土の味わいや釉薬の流れ、窯変(ようへん)による色のゆらぎといった自然の妙が宿っています。
この無地唐津の釉薬の下に鉄絵で文様を描いたものが「絵唐津(えがらつ)」です。もっともポピュラーな唐津焼として知られ、抽象文や草花、動物、幾何学模様、人物、風景など、さまざまなモチーフが大胆に、そして手早く描かれています。筆遣いは簡素ながら、どれも力強さと素朴な生命力に満ちています。
鉄絵の発色は、焼成の仕方によって変化するのも魅力のひとつ。釉の下に鉄絵があるものはすべて「絵唐津」とされます。



唐津焼の釉薬と多様な表情
唐津焼の世界は、釉薬によっても豊かな表情を見せてくれます。代表的なものは以下の通りです。
・黒唐津:深みのある黒釉を施した器。力強く、どこか神秘的な雰囲気を漂わせます。
・蛇蝎唐津(だかつがらつ):黒釉の上に長石釉をかけることで、釉が縮れ、蛇のうろこのような独特の表面に。数が非常に少なく、茶碗などに用いられます。
・斑唐津(まだらがらつ):藁灰を使った斑釉(白く濁った不透明な釉)で、白からグレー、青味がかった斑紋が出るものもあります。
・朝鮮唐津:黒釉と斑釉を大胆にかけ分け、強いコントラストを生んだ人気の様式。名前の通り、朝鮮陶の影響が見られます。


技法の豊かさも唐津の魅力
唐津焼は、その技法の多様さでも知られています。
・三島唐津:まだ乾かない素地に文様をスタンプし、白泥をかけて拭き取り、透明釉をかける象嵌技法。
・刷毛目(はけめ)唐津:白土を刷毛でざっくりと塗った装飾。刷毛の跡が土の呼吸を感じさせます。
・櫛目(くしめ)唐津:櫛で表面に連続模様を刻んだもの。リズミカルな線が魅力。
・摺絵(すりえ)唐津:白化粧土の上に模様を擦り描きした装飾。
・粉引(こひき)絵唐津:白化粧を施した粉引に、鉄絵で文様を加えた器。
・二彩唐津:鉄による褐色と、銅による緑色という、2色の絵の具で華やかに描かれた珍しい様式。
さらに、焼き上がりの色によって、「青唐津」「黄唐津」と呼ばれるタイプもあります。これらは自然釉や焼成条件によって偶然に生まれる美しさで、一つとして同じものはありません。



土と炎が生み出す、飾らぬ美
唐津焼は、一見すると地味に見えるかもしれません。しかしその内側には、土の質感、釉薬の流れ、炎のゆらぎといった自然との対話があります。手仕事のぬくもりと、使う人の暮らしに寄り添うやさしさが唐津焼の本質。日々の食卓のなかで、ふと気づく美しさ──それこそが、唐津の「野趣」なのです。
唐津焼・絵唐津沢瀉文様四寸五分皿・中村恵子《小皿・13.3cm》


唐津焼・絵唐津沢瀉文様四寸五分皿・中村恵子《小皿・13.3cm》
おおよそ直径13.3 × 高さ3.0cm
唐津焼:朝鮮唐津かけ分け六寸五分皿・中村恵子《中皿・20.0cm》


唐津焼:朝鮮唐津かけ分け六寸五分皿・中村恵子《中皿・20.0cm》
おおよそ直径20.0 × 高さ5.0cm
唐津焼:絵唐津達磨文様湯呑・中村恵子《湯呑》


唐津焼:絵唐津達磨文様湯呑・中村恵子《湯呑》
おおよそ直径7.0 × 高さ8.5cm
唐津焼:黒唐津六寸五分皿・中村恵子《中皿・6.5寸・20.0cm》


唐津焼:黒唐津六寸五分皿・中村恵子《中皿・6.5寸・20.0cm》
おおよそ直径20.0 × 高さ5.5cm

