食卓には、器が奏でる静かな調べがある。今日、私は「染付:麦わら手蓋付小丼・土山敬司」の、その静けさの中に込められた深い物語に思いを馳せた。
この小丼は、手のひらにすっぽりと収まる愛らしい佇まいだ。容量は320ml、直径は13.0cm。数字で語るとただの器だが、実際の質感や曲線が、どこか懐かしい感覚を呼び起こす。藍色の染付で描かれた「麦わら手」の模様は、どことなく素朴でありながらも端正だ。古き良き日本の農村風景を思わせるそのデザインは、見る人の心に静かに語りかけてくる。


麦わら手は十草文とも言う。図案の元となっている十草は日本家屋などの生け垣によく生えている、トクサ科トクサ属の植物だ。全面が 『茎』という感じでまっすぐ直立した、所々黒い節のある植物で、一年中、花はもちろん、葉っぱ出ない、一風変わった草。また、「金を磨くときに十草の葉で磨くと光沢が増す」と言われていることから、金を呼ぶ縁起が良い絵柄だ。
陶芸家が一点一点、手仕事で仕上げるというこの器は、機械生産では決して生まれ得ない、独特の温もりを持っている。蓋が付いているため、食卓での用途も広がる。例えば、炊きたてのご飯をよそい、蓋を閉じて蒸気を逃さず保温する。あるいは、煮物、小さなおかずやスープを盛り付け、蓋をして一品ずつ温かみを保つ。どんな使い方をしても、食べる人の心をそっと包み込んでくれる。
この器が作られる過程を想像すると、さらに愛おしくなる。土と向き合い、釉薬を調合し、そして焼き上げる。炎の揺らめきとともに生まれる色や質感は、計算できない偶然の産物だという。けれども、そこには作り手の技術と経験が確かに息づいている。
ふと思う。この小丼が手元に届いたら、まず何をよそおうか。新米のご飯だろうか。それとも、心尽くしの煮物だろうか。いや、むしろ何もよそわず、しばらくその美しさを眺めていたい。器という存在が、食事という日常の中でどれほどの役割を果たしているのか、改めて気づかされる。



「染付:麦わら手蓋付小丼」は、ただの器ではない。それは、手仕事の美しさと日本の伝統が交差する一点物だ。そして、それを手に取った人の食卓に、小さな感動と彩りを運ぶ。食べるという行為がただの栄養摂取ではなく、心を満たす時間へと変わる瞬間を、この器はきっとそっと支えてくれるに違いない。
染付:麦わら手蓋付小丼・土山敬司


染付:麦わら手蓋付小丼・土山敬司
おおよそ
蓋あり:直径13.0 × 高さ9.0cm
蓋無し:直径13.0 × 高さ7.0cm


