陶磁器の装飾技法のなかでも、「彫」は非常に古い歴史を持つものです。器面に凹凸を施し、美しい表情を与えるこの手法は、太古の昔から世界各地で親しまれてきました。
彫の起源
彫による装飾の起源は、縄文土器にまでさかのぼります。縄文人たちは、まだ生乾きの土器に縄を押し当てることで、器表に独自の文様を施しました。この「押し付ける」「刻み込む」という基本技法は、現在に至るまで脈々と受け継がれています。



基本的な彫の技法
器が生乾きの状態で、へらや小刀、櫛状の器具、スタンプなどを使い、文様を刻んだり押し付けたりして装飾します。
●陰刻(いんこく)
文様が沈み込んでいる彫り方。線状の場合は、沈線文(ちんせんもん)とも呼ばれます。
●陽刻(ようこく)
文様が器面から盛り上がるように表現された彫り方です。
また、へらを用いて描いたものは「ヘラ描き文」と呼ばれ、沈線文の一種です。櫛状の道具でつけると、複数の沈線がまとまった筋状の文様になります。特に古瀬戸の作品では、こうした沈線文が「画花(かつか)文」と呼ばれています。文様が花でなくても「画花文」と総称されるのが特徴です。

代表的な彫のバリエーション
●しのぎ(鎬)文
へらなどで器表を細く削り取り、稜線(りょうせん)を際立たせる技法。特に高台や胴の部分に施され、光を受けることで美しい陰影が生まれます。
●面取り
器の角や曲面を一定の幅で削ぎ取る手法です。壺、徳利、碗など立体的な器によく見られ、柔らかなフォルムにシャープな表情を加えます。
●飛び鉋(とびかんな)
小石原焼や小鹿田焼に代表される民窯で有名な技法。ろくろの上で回転する器に鉋(かんな)を当てると、回転運動で鉋が跳ね、リズミカルな削り目が生まれます。
黒土に白土をかけてから飛び鉋を施すと、白地に黒い文様がリズミカルに浮かび上がります。これを中国では「飛白手(ひはくで)」、日本では「絣手(かすりで)」「躍りべら」とも呼びます。
●印花(いんか)文
花文様や巴文、雲鶴文などをスタンプ状の道具で押し付け、連続模様や散らし模様を施す技法です。さらに、押し跡の窪みに異なる色の土を埋め込むと、「象嵌文様(ぞうがんもんよう)」となり、より華やかな効果を生み出します。



彫と釉薬の美しい関係
青磁や白磁といった透明感のある釉薬を使った陶磁器では、彫による凹部に釉薬がたまることで、文様が浮き立つ独特の美しさが生まれます。
●片切り彫
文様の輪郭線に沿って深く彫り込む方法で、精巧な表現が可能です。青磁や白磁によく使われています。
●浮彫(うきぼり)文/浮文
背景を彫り下げ、文様部分を浮かび上がらせるレリーフのような手法です。
●透かし彫り(透し文)
表面をレースのように細かく切り抜いていく技法で、光を通す繊細な美しさを持ちます。



まとめ
彫りの技法は、単なる装飾にとどまらず、土と釉薬、光との絶妙なハーモニーを生み出します。素朴な民芸から精緻な青磁・白磁作品に至るまで、彫の表現力は陶磁器の魅力を無限に広げてきました。器の表面に刻まれた一筋一筋が、時間と手間をかけた作り手の手跡であり、見る人、使う人に静かな感動を与えてくれるのです。
益子焼 kinari手付きスープボウル(大)


益子焼 kinari手付きスープボウル(大)
素材 陶器
色 生成り
寸法 直径:約16.5cm
高さ:約6.5cm
容量:満水700cc位
※一つ一つ手作りで作陶している為、多少の誤差変動がございます。
和食器 皿山 おんた焼き 飛び鉋


和食器 皿山 おんた焼き 飛び鉋
サイズ 約Φ15.6×H3.7cm
有田焼 青磁唐草彫多用鉢


有田焼 青磁唐草彫多用鉢
産地:有田焼
窯元:崋山窯
サイズ:14.5×高さ4.8cm

